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岩瀬利郎著『発達障害の人が見ている世界』(2022年、アスコム)を読みました。著者は、1万人以上の発達障害の人たちと向き合ってきたという精神科医です。32の事例について、発達障害の人がそう行動する理由を解説しています。発達障害の特性についての解説もあり、素晴らしい内容だと思います。しかし、発達障害の人の視点が足りないと感じました。
事例には当事者のコメントもありますが、詳しく話を聞いたようには見えませんでした。著者の患者の事例もあれば、著者との関係性が不明な人の事例もあります。簡単なやり取りで、そう行動する理由を著者が想像しているように見えます。発達障害の人が自分の見ている世界を解説するのを期待していましたが、そうではありませんでした。
発達障害の私に当てはまる事例もあるし、当てはまらない事例もあります。相手に失礼だとわかるので、同じ行動をしない事例もあります。行動は同じでも、理由が違う事例もありました。紹介された事例が発達障害の人の全てに当てはまるわけではないとわかります。この本の事例を手本に対応しても、人によって正解にも不正解にもなると思います。
発達障害の人の解説がほしかったです。事例が自分に当てはまるのかも記載すれば、個人差があることも見えやすくなると思います。良い内容なので、足りない部分があるのが惜しいです。行動には理由があるという視点は素晴らしいと思います。発達障害の特性の説明も分かりやすいです。読む価値はあると思います。この本によって、むやみに怒る人が少なくなるのを願っています。
2024年2月26日
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